「川の日」と「多自然型川づくり」【瀧健太郎】
2017年07月31日(月) 03:12更新
7月7日は「川の日」です。みなさんご存知でしたか?
滋賀県で暮らすみなさんには、7月1日の「びわ湖の日」の方がよく耳にされるかも知れません。
7月7日七夕は、牽牛と織姫が一年に一度、天の川で会える日。旧建設省(現国土交通省)が平成8年(1996年)度にこの日を「川の日」に制定しました。ちょうど、近代河川制度の100周年にあたる年でした。「河川と国民との関わりとその歴史、河川の持つ魅力等について、広く国民の理解と関心を深めることにより、河川行政が地域住民等との連携・協調の下で展開されること」という願いを込めて制定されました。
今回のコラムでは「川の日」にちなんで、多自然型川づくりについてご紹介したいと思います。
第二次世界大戦以降、伊勢湾台風をはじめ日本全国で大水害が頻発していました。時代の要請もあり、河川行政はとにかく治水上効率的な川づくりを懸命に進めます。大量の洪水をはやく流すため、そして、用地買収をできるだけ少なくするため、直線的な川にして、コンクリート護岸を川岸に立てて流れをよくしました。コンクリートを多用した直線的な川からは自然が減少していきました。そのような中、平成2年には建設省治水課から、「多自然型川づくりの実施要領」 が、全国の地方建設局と都道府県あてに通達されます。この通達の中で、「多自然型川づくり」は次のように定義されています。
「河川が本来有している生物の良好な成育環境に配慮し、あわせて美しい自然景観を保全あるいは創出する事業の実施をいう。」
お堅い行政文書の中にあって、なんとやわらかな定義でしょうか。しかしこの通達は、技術的な指針やマニュアルも示さずに、それぞれの河川管理者の才覚で、自然豊かで美しい風景を生み出す川づくりを進めなさいというものでした。ともあれ、この通達を転機に、日本全国で試行錯誤が進められるようになりました。当初は、玉石混交、うまくいかない事例もありました。
それから25年以上が過ぎ、現在ではすばらしい川づくりの事例も増えてきました。技術も蓄積され、指針やマニュアルも充実してきています。平成18年には「型」がとれて「多自然川づくり」と呼ばれるようになり、現在の川づくりの基本になっています。
そして最近では、川づくりを河川管理者だけではなく、地域のみなさんを中心にさまざまな人たちが連携しておこなう「小さな自然再生」の取組が各地で進められるようになってきています。
できることからはじめよう
水辺の小さな自然再生 http://www.collabo-river.jp/
みなさんも一緒に「小さな自然再生」しませんか?
(参考文献)
1)日本河川協会:「川の日」実行委員会ホームページ http://www.japanriver.or.jp/kawanohi/
2)建設省河川局治水課長・都市河川室長・防災課長,多自然型川づくり実施要領,1990.
3)関正和:大地の川 甦れ、日本のふるさとの川,草思社,1994.
4)国土交通省河川局河川環境課長・治水課長・防災課長:自然川づくり基本指針,2006.
5)「小さな自然再生」事例集編集委員会 編著:できることからはじめよう 水辺の小さな自然再生事例集,日本河川・流域再生ネットワーク(JRRN),2015.