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学科のビジョン

世紀の初頭に学生生活をおくるみなさんは、日本が20世紀に経験した環境問題を自分でじっさいに体験したことは少ないかもしれません。みなさんがもっている環境問題の知見は、多くの場合、人に聞いたり書物を読んだり、あるいはマスコミ等の報道などによってえたものがほとんどでしょう。わたしたちが住んでいる世界を理解していくためには、こうした経路で情報や知識をえていくことはむろん大切なことではあるのですが、問題と向きあってこれを克服しようとすると、一歩進んだ工夫が必要になってきます。

いま社会のなかでとりざたされている各種の環境問題は、すでに自明のものとして人々に受けとめられている場合が少なくありませんが、本来なにが環境問題であるのかは最初から明らかになっているわけではありません。社会のなかである事象が問題であるとみなされるためには、複数の人々の共通した理解が前提となってきます。つまり、環境問題として自明ではない事象を問題として認識するのは、人間の意識的な行為にほかならないのです。こうした問題の把握があって、はじめて問題の解明や解決にむけた営みが意味をもってきます。したがって大学で学んでいく際には、問題は人によってあたえられるのではなく、自分で発見していくものであるという認識が必要でしょう。また、環境問題は具体的には大気の汚染や水質の汚濁、自然生態系の劣化など、現象としては自然の要素の変化として現れてくることがまれではありません。そのため、環境問題にとりくむのは自然科学が中心であるといった理解が根強くあったことは事実です。

しかし、こうした現象がそもそも発生した背後には、人間の営みがあったことはすでによく知られてきています。ゴミ問題など、もともと人間の活動の結果から発生した問題では、あらためていうまでもありません。そこで、環境問題へのとりくみには、自然科学とならんで人文・社会科学も欠かせないという認識はようやく定着してきました。

環境政策・計画学科の特徴は、これまでの学問分野の分類にはおさまりきらず、問題指向的な性格をもっているという点にあります。当学科の専門科目は、それを端的に示しているといえましょう。つまり、自然科学から人文・社会科学まで、問題の発見・解明・解決という一連のプロセスにおいて必要となるものをそろえている点に特徴があります。この学科で学んだ学生は、卒業後多様な方面に進んでいますが、自分でものを考え、実践するというトレーニングを積んだ点は共通しています。卒業後、職場での仕事のなかであらためて環境政策・計画学科の意義を実感したという声を卒業生から聞くことがありますが、向かう方向は多様であれ、それぞれのもち場でこの経験が生きてくるだろうと期待しています。