カナダ・ウィンザーで見たもの 【松本健一】
2015年08月12日(水) 10:51更新
2015年8月2日~5日にウィンザー大学(カナダ・ウィンザー)で開催されたInternational Conference on Environmental Indicatorsに参加しました。
ウィンザーは、デトロイト川を挟んでアメリカ・デトロイトと接する国境の町です。デトロイトは治安に問題のある町だとよく耳にしますが、対岸のウィンザーではそのように感じることはなく、川を一本隔てただけで大きな違いがあることを感じました。ウィンザーは人口も少ない小さな町で、お店も多くありません。市内にショッピングモールがありますが、ダウンタウンから車で20分かかるようなところです。そのため、市民はデトロイト側で買い物や娯楽を楽しむことも多いようです。
会場となったウィンザー大学は、デトロイト川からすぐのところにある小規模の大学でした(と言っても本学よりは大きいですが)。
ウィンザーへの旅は、「伊丹→羽田→トロント→ウィンザー」と乗り継ぎが多く時間のかかるものでした。デトロイト側のメトロポリタン空港に飛び、タクシーなどでウィンザーへ入る方が便利だったようです・・・。
今回出席した国際会議(学会)は、その名のとおり「環境指標」に関するもので、微生物や動植物を用いた土壌・水環境等の環境汚染・変化の測定や土地利用変化のモニタリング、環境保全のガバナンス指標などの研究発表が行われました。多くは環境測定の研究発表でしたが、ガバナンス研究もちらほらと見られました。筆者は政策研究をしているため異分野の研究が多かったですが、このような学際的な学会に出席し、異分野の研究に触れることはとても貴重な機会だと改めて感じました。
筆者は、環境省・環境研究総合推進費戦略研究プロジェクトS-14(気候変動の緩和策と適応策の統合的戦略研究;http://s-14.iis.u-tokyo.ac.jp/)の研究成果”Synergy Potential among Climate Change Mitigation, Adaptation, and Biodiversity and Ecosystem Conservation in the Forest Sector”を発表するために参加しました。この研究は、森林分野を対象として、気候変動の緩和・適応策および、生物多様性/生態系保全策の間にシナジー効果(共便益)が見られるかどうかを政策面から分析したものです。上でも述べたように異分野の研究が多かったですが、学会自体が小規模だったため、ざっくばらんに質問・コメントを受けることができました。
学会最終日には、Agriculture and Agri-Food Canada(政府系農業研究所)、およびウィンザー大学・Great Lake Institute of Environmental Research(五大湖を中心とした水環境研究所)を訪問する機会がありました。
Agriculture and Agri-Food Canadaでは、試験農場で現在行われている研究について説明を受けました。その1つは、異なる種類の肥料(栄養)を作物に与えた場合の作物成長への影響や土壌・水環境への影響についてでした。カナダの規模を活かした広大な農場で研究が進められているという印象を受けました。
Great Lake Institute of Environmental Researchでは、研究所で行われている研究分野の説明を受け、また研究施設を見学しました。研究所は常勤教員10名程度の小規模なものですが、微生物学、動植物学、遺伝学、化学などさまざまな分野の研究者が連携をして五大湖をはじめとする水環境研究を推進しているスケールの大きさを感じました。
国際会議に参加する理由は、もちろん研究成果を発表するためです。そこでの質疑やディスカッションを通じて、自身の研究を見つめなおすことができます。また、関連分野の研究者と交流することで、新しいアイデアを得られることもあります。
しかし、メリットはそれだけではありません。国際会議はさまざまな国・都市で開催されるため、なかなか訪れる機会のない場所に行くことができます。今回訪れたウィンザーも、このような機会がなければ一生訪れることはなかったかもしれません。このような機会があることにより、異文化を知り、グローバルな感覚を磨けるように思います。