国際的な気候変動対策のゆくえ 【松本健一】
2014年12月16日(火) 03:43更新
昨年から今年にかけて、気候変動に関する政府間パネル(注1)から『第5次評価報告書』(図1)が出版され、改めて気候変動(≒地球温暖化)がわれわれ人間により引き起こされていることが示されました。気候変動は人間、人間以外の生物、そして自然環境に対してさまざまな悪影響を及ぼします。異常気象の頻発、水害、干ばつ、氷河の融解、生物多様性の喪失、農作物への被害、伝染病の蔓延など、あらゆるところに被害をもたらすと考えられています。既に気候変動は起きていますが、影響がこれ以上拡大しないように早急に効果的な気候変動対策を実行する必要があります。
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図1:第5次評価報告書(3つの作業部会からの報告書と統合報告書からなる
出典:http://www.ipcc.ch/report/ar5/(2014年12月10日アクセス).
毎年、12月上旬に気候変動対策に関する国際会議が開催されています(注2)。今年はペルーの首都・リマで20回目の会議が開催されました(図2)。毎年の会議では、気候変動がこれ以上進まないようにするためにどうするのか(これを緩和策と言います)、起きてしまった気候変動の影響にどうやって対処するのか(これを適応策と言います)、先進国が発展途上国の気候変動対策をどうやって支援するのか、などについて話し合われています。世界のほぼすべての国が集まり、それぞれがそれぞれの立場で意見を主張しますので、議論は紛糾します。約2週間に及ぶ今年の会議では、「すべての国が今より進んだ温室効果ガス削減目標(達成年を含める)を定める」などの合意がなされましたが、先進国と途上国の対立により当初考えられていたよりも全体的に弱い内容となりました。
図2:会議の様子
出典:http://unfccc.int/meetings/lima_dec_2014/meeting/8141.php(2014年12月10日アクセス)
来年はフランス・パリで開催されますが、この会議が注目を集めています。というのは、今回の合意に基づき、すべての国が参加する2020年以降の国際的な気候変動対策の新しい枠組みが決まる予定だからです。2008~2012年の京都議定書第一約束期間が終え、現在は2013~2020年の同第二約束期間のまっただ中です。しかし、第二約束期間には日本をはじめいくつかの主要先進国が参加していません。また、京都議定書では発展途上国の気候変動対策目標が明記されていません。そこで、すべての国が参加するより長期的な気候変動対策のための枠組みが現在検討されています。
果たして、議論のゆくえはいかに?また、現時点で態度を明確にしていない日本はどのような目標を掲げるでしょうか?
注1:国際的な専門家で構成されていて、気候変動(地球温暖化)について科学的な研究を収集・整理し、数年おきに評価報告書を出版している。
注2:気候変動枠組条約締約国会議で、COP(Conference of the Parties)と呼ばれる。また、関連するいくつかの会議やサイドイベントが開催される。政府機関、国連機関、専門機関、NGO、メディアなど、さまざまな立場の人が参加している。