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プラスチック資源循環促進法と新規ごみ処理施設と交付金【金谷健】

2021年11月04日(木) 04:25更新

プラスチックは、その有用性から、幅広い製品や容器包装に広く利用されている、現代社会に不可欠な素材ですが、海洋プラスチックごみ問題、気候変動問題、諸外国の廃棄物輸入規制強化等への対応を契機として、国内におけるプラスチックに係る資源循環の促進等の重要性が高まっています。

そのため国は、2019年5月31日に「プラスチック資源循環戦略」を策定し、「3R(発生抑制Reduce+再使用Reuse+再生利用Recycle)+Renewable(再生可能性)」を基本原則とするとともに、
①2030年までにワンウェイプラスチックを累積25%排出抑制、
②2025年までにプラスチック製容器包装及び製品のデザインをリユース又はリサイクル可能なデザインに、
③2030年までにプラスチック製容器包装の6割をリユース又はリサイクル、
④2035年までに使用済プラスチックを100%リユース、リサイクル等により有効利用、
⑤2030年までにプラスチックの再生利用を倍増、
⑥2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入という、野心的なマイルストーンを、目指すべき方向性として掲げました。
https://www.env.go.jp/press/106866.html

これらを踏まえて、プラスチック資源循環促進法(正式名称:プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律)が、今年(2021年)6月4日に国会で可決され、来年4月からの施行が予定されています。
http://www.env.go.jp/recycle/recycle/pdf/gaiyou.pdf

プラスチック資源循環促進法では、各主体に次のような、仕組みの導入や、努力義務を課して、プラスチック資源循環を促進しようとしています。
①製造事業者等には、努めるべき環境配慮設計(DfE:Design for Environment)に関して、製品を対象とした指針を定め、指針に適合した製品であることを認定する仕組みを設けます。
②ワンウェイプラ(使い捨てプラ)の提供事業者(小売・サービス事業者等)には、取り組むべき、「使用の合理化」の判断基準を策定し、これに対する勧告等の仕組みを設けます。
③製造・販売事業者には、自主回収・再資源化事業計画を作成しこれを認定する仕組みを導入します。
④排出事業者には、排出抑制・再資源化等に取り組むべき判断基準及び勧告等の仕組みを導入します。
⑤市町村には、家庭から排出されるプラスチック使用製品の分別収集・再商品化等の促進に必要な措置を講じるように努めることが、課せられます。
⑥消費者には、プラスチック使用製品の使用の合理化によりプラスチック使用製品廃棄物の排出を抑制すること 、事業者及び市町村双方の回収ルートに適した分別排出すること 、認定プラスチック使用製品を使用することに努めること、が課せられます。

また、「プラスチック資源循環促進法の施行令案」等に関する意見募集(パブリックコメント)が、今年10月8日から11月7日まで実施されています。
http://www.env.go.jp/press/110005.html

なお、この教員コラムで私は、一昨年まで、5回にわたって、彦根愛知犬上地域(彦根市、愛荘町、豊郷町、甲良町、多賀町)での新規ごみ処理施設の立地・建設について、取り上げてきました。
http://depp-usp.com/archives/4906
http://depp-usp.com/archives/4182
http://depp-usp.com/archives/3434
http://depp-usp.com/archives/2747
http://depp-usp.com/archives/2324

この新規ごみ処理施設で、プラスチックごみは、燃やして熱エネルギーを回収するのか、燃やさずに分別・資源化するのかを決定しなければなりません。新規ごみ処理施設を建設するための「補助金」である「循環型社会形成推進交付金」を国からもらうためには、ごみの分別や処理・リサイクル等をどのようにする予定か等を記載した「地域計画」を事前に提出する必要があるからです。
そこで、「ごみ分別方法統一化等検討委員会」が設置され、今年3月以降、現在まで4回の委員会が開催されています。
この検討委員会については、彦根市HPの彦根市廃棄物減量等推進審議会のサイトで、間接的に簡単に紹介されています。
https://www.city.hikone.lg.jp/kakuka/shimin_kankyo/5/2_2/12/17695.html

検討委員会に提出された事務局資料によると、
①容器包装プラスチック(白色トレイを含む)については、新施設における施設整備費、運営費および収集運搬費を比較した結果、施設整備から20年間の運営期間において、分別方法を燃やすごみとする方が、資源ごみとする場合に比べて実負担額で約40億円安価になる結果となった。
②圏域としては、今後、少子高齢化により将来の介護等福祉費用の増加が見込まれる中、ごみ処理にかかる経費の削減に努めたいと考えており、分別方法は「燃やすごみ」とし、焼却により発生した熱を回収して有効に活用していきたい。
③なお、プラスチック類を焼却する場合における新施設整備費において、熱回収施設およびリサイクル施設への交付金は約62億円、交付税措置は約56億円を想定(消費税率10%)しており、それらの合計約118億円である。
④つまり、プラスチック類焼却の方が約40億円安価となっても、もし交付金と交付税措置の約118億円が受けられなければ、圏域の大きな財政負担になる。
とされていて、この新規ごみ処理施設が、交付金の対象となるのかどうかが、重要なポイントとなっていました。

そうした状況において、国(環境省)からは、今年6月30日~7月2日の「全国廃棄物・リサイクル行政主管課長会議」
http://www.env.go.jp/recycle/misc/conf.html
において、「循環型社会形成推進交付金の交付」と「プラスチック資源の分別収集の実施」との関係について、プラスチック資源循環法施行後は、プラスチック資源の分別収集の実施を循環型社会形成推進交付金による支援を受けるための要件とする(※)方向で作業中。
※プラスチック資源循環法の施行期日より前までに環境大臣に送付された地域計画(当該計画を延長する場合などを含む。)に基づく事業を行う場合は除く。
との方針が示されました。

つまり、今年度内に地域計画を策定すれば、この新規ごみ処理施設への交付金は「滑り込み」でもらえる見込みだということです。
ただ、そうした見込みであるものの、国の方針がプラごみの分別・資源化に動いていて、施設供用開始となる令和11年度には分別・資源化の流れがさらに加速しているものと予想されることを踏まえると、お金をかけてでも分別・資源化した方が適切ではないか、という判断もあり得ます。

彦根愛知犬上地域の1市4町が、最終的にどのような判断をするのか、注目したいと思います。