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食品ロス問題とは【和田有朗】

2024年05月10日(金) 11:04更新

皆さんは食品ロスという言葉を聞いたことがありますか。

「食品ロス」とは、本来食べられるのに捨てられてしまう食品のこと1)です。

日本の食料自給率は38%(2022年度)2)であり、食料の大半を海外からの輸入に頼っている一方で、食べられる食品を大量に廃棄しているのが現状です。

最新のデータとして、日本では2021年度に、約523万トンの食品ロス(家庭から約244万トン、事業者から約279万トン)1)が発生したと推計されています。

一方、発展途上国では飢餓が深刻です。国連世界食糧計画(WFP)によると、WFPによる食糧支援量は440万トン (2021年)3)で、日本の食品ロス量523万トン (2021年)の方が約1.2倍多くなっています。つまり、貧困や災害時の緊急支援など、世界の人々に対して支援される食品の量より、日本で廃棄されてしまう食品の量の方が多いのです。

ごみの焼却にともなう環境問題も深刻です。特に、水分を多く含む食品の焼却には多くのエネルギーが必要なうえ、処理費用も掛かります。また、焼却時には二酸化炭素(CO2)が排出されます。さらに、すでに述べたように、日本の食料自給率は低いため、輸入等の運送過程においてもエネルギーの無駄が発生しています。

食品の多くを海外から輸入している日本は、今後も継続的に安定した食生活を送るためにはどうすべきかを考え行動していく必要があり、食品ロスの削減は一つの避けられない課題といえます。しかし、食品ロスを解決すべき課題として捉えているのは日本だけではありません。

2015年9月に開かれた国連サミット「持続可能な開発のための2030アジェンダ」では,2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の1人当たりの食料の廃棄を半減させるといった目標が掲げられました4)。食品ロスの削減に向け、わが国の目標は、2030年度に2000年度と比べ、家庭系食品ロス量、事業系食品ロス量いずれも半減できるよう取り組みを推進させるとしています。2000年度は980万トン(家庭から約433万トン、事業者から約547万トン)だったため、2030年度の目標値は489万トン(家庭から約216万トン、事業者から約273万トン)2)となっており、年々減ってはきていますが、目標値まで減っていないのが現状です。

それでは、食品ロスを減らすのに具体的にどのようなことをすればよいのでしょうか。私のゼミの卒業生が卒論で調査した結果5)をひとつ紹介したいと思います。

滋賀県立大学の学生を対象に一週間、食品ロスの発生を抑制する行動がどれくらいできたかを評価してもらいました。行動を実行できなかった割合の高い項目から並べたものが表1です。

 

 

 

実行できなかった割合が最も高かったのが「①冷蔵庫の中身を確認してから買い物に行った」で、次いで、「⑥野菜の芯や葉も工夫し調理して使い切れた」、「③賞味期限(消費期限)をチェックできた」の順でした。

「①冷蔵庫の中身を確認してから買い物に行った」と「③賞味期限(消費期限)をチェックできた」は、難しいことではないが面倒だということ、「⑥野菜の芯や葉も工夫し調理して使い切れた」は、調理の知識や技術も必要になるため、そのような結果になったと考えられます。つまり、購入前、調理前の食材の確認行動や食材を使い切る調理技術が食品ロスを減らす一助になるのではないでしょうか。

皆さんも普段の生活での行動を振り返ってみて、食品ロス削減のために改善できるところから実行してみるのはいかがでしょうか。

 

<参考文献>

1)農林水産省:食品ロスとは

<https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/161227_4.html>

2)農林水産省:食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢

<https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/attach/pdf/161227_4-102.pdf>

3)国連WFP協会:年次報告書2021

<https://docs.jawfp2.org/wfpgo/2022/jawfp_annual_report_2021.pdf>

4)農林水産省:食品ロスの削減に向けて

<http://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/attach/pdf/161227_4-58.pdf>

5)和田有朗他:一般家庭における食品ロスに関する消費者の意識と行動の関連,環境情報科学 学術研究論文集32,pp.179-184,2018年