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「一票の価値」と「一票の想い」【村上一真】

2022年11月14日(月) 09:48更新

先月の井手先生のかっこいいアメリカ旅コラムに触発され、前回までのアジア旅行記をいったん中断してアメリカ旅行記を書こうと思いましたが、すぐに写真を見つけられそうになかったため、導入部だけアメリカにして選挙の話を書きます。

アメリカでは中間選挙が行われ、予想外の接戦となり両党の議席はいまだ確定していません(11/11時点)。日本では2021年10月に衆議院選挙、2022年7月に参議院選挙が実施されました。国政選挙のたびに、メディアから「一票の価値」に関する取材があります(ex. 2022年7月参議院選挙でのNHKからの取材:https://www.nhk.jp/p/ohayou/ts/QLP4RZ8ZY3/blog/bl/pzvl7wDPqn/bp/pbnK76pwGk/)。投票行動の価値を金額換算して示すことで、投票を促すという目的です。

政治や選挙の専門家でもない僕に取材が来るわけは、下記の10年前の日経新聞の記事によるものです。ちなみにこの選挙は第2次安倍政権の誕生となった衆院選です。
https://style.nikkei.com/article/DGXDZO48759780T21C12A1W14001?channel=DF210220171905&style=1

これは日経新聞からの依頼により、(若気の至りで)前職時に試算を行ったものであり、レポートは下記にあります。
https://www.apir.or.jp/wp/wp-content/uploads/292.pdf
https://www.apir.or.jp/wp/wp-content/uploads/279.pdf

つまり日経新聞の記事をみたメディアの方から選挙時に取材されて「新たな記事」が書かれ、ネットなどに残る。そして次の国政選挙時にこの「新たな記事」を見つけたメディアの方から取材され「さらに新たな記事」が書かれる。さらに・・・、ということが脈々と10年間続いてきた、ということです。

となると、最初のレポートの試算における基本姿勢や考え方は薄まり、計算方法と数字のみが独り歩きしていくことになり、少し困ることになります。そのためメディアの方には、このレポートを送り、「基本姿勢や考え方」も伝えるようにしています。

値札のついていないものを金額換算することに絶対的な正解はないため、結果としての「一票の価値」の数字だけでなくプロセスも含めて、というよりもプロセスだけを理解して(=記事にして)もらえればなぁ、ということを悶々と10年間思っています。

ただ悪いことばかりではなく、経済学Ⅱ(マクロ経済学)の授業内容(政府支出と国民所得の関係における乗数効果の議論)と関連付けて、選挙に行くようにとの啓発活動を行う材料になっています。ネタバレになるので端的にしか示しませんが(ネタバレになっても誰も困らないはずなので、単に詳細を記載するのが手間だからか?)、
・自分(まだ選挙権はないが関係する人含む)の生活が豊かになるような、自身が望む政府支出の中身を考えてみよう
・政府支出の中身を最終的に決定するのは国会議員(官僚など多くの人も関わるけれども)
・選挙において国会議員を選ぶ行為は、間接的に、政府支出の中身を決めることに関わっている
・「一票の価値」は国会議員1人当たりの年間責任予算額(国会議員はこの自覚が必要)から導かれている
・この金額を託すことができる候補者に投票するということ
・自身が望む●万円/人の税金の使い方(ex. 教育、雇用、子育て、IT、プログラミング、環境・エネルギー問題、ジェンダー)を最終的に決定する人を選択するのに関与しないのは単純にもったいない。●万円をアルバイト代、仕送り代、生活費と比較してみては?何か月分になるか?
・納税の「義務」に従っているだけでなく、税の使い道に関われる「権利」を行使すべきでは?
・シルバーデモクラシーに対抗して、若者こそ高齢者よりも投票率をあげなければいけないのでは?(投票数=投票率×人数)

次の参院選までは選挙はないだろうことから、現在、黄金の3年と呼ばれているなかで政権運営がなされています。ただ昨日も大臣が辞任しました。2人目です。想定外の衆院選がないこと(=取材がないこと)を願っています。

国政選挙だけが選挙ではなく、都道府県、市区町村の首長や議員の選挙もあります。「一票の想いや意味」を考えて能動的に投票所に足を運んでもらいたいと思います(時代に即した足を運ばずに投票できる新たな制度・しくみも必要ですが)。さらには、自身が望む税金の使い方は自分が望む社会の姿だろうことから、投票行動だけでなく、ビジネスや公共での仕事を通じて、その実現に少しでも関わってもらいたいと思います。