何を基準に賃貸住宅を選びますか?【白木裕斗】
2017年07月03日(月) 10:22更新
今回、初めてコラムを書かせて頂くので、初心に返って着任した頃を思い出すような内容でコラムを書こうと思います。テーマは“賃貸住宅選び”です。
みなさんは、賃貸住宅を選ぶ時に、何を基準にしていますか?まだ選んだことのない、これから選ぶという方は、何を基準に選びたいですか?学校や最寄り駅までの距離、家賃、周辺の商業施設、部屋の広さなど、様々な基準があると思います。また、絶対に譲れない条件もあると思います。僕の場合は、学生時代の家の目の前が竹やぶで、ジメジメ&薄暗い憂鬱な毎日を過ごしたという経験から、日当たりの良さだけは譲れない条件として持っています。
現在は、スマートフォンのアプリや各不動産会社のホームページなどで、自分の求めている家の条件を入れるだけで、たくさんの不動産情報から条件にあった住宅を選び出してくれるサービスが提供されています。これらのサービスは非常に便利なのですが、個人的には、「住宅のエネルギー性能」の項目を追加してほしいなあと感じています。
家庭では様々な用途のためにエネルギーを使用しています。国などの統計では家庭のエネルギー消費の用途を「冷房」「暖房」「給湯」「厨房」「動力・照明他」の5つに分類していますが、みなさんはどの用途のためのエネルギー消費量が大きいかご存知でしょうか?地域によって違いはありますが、日本の平均としては「動力・照明他」が約4割と最も大きく、「給湯」、「暖房」がそれぞれ約3割、約2割と続きます1)。
「動力・照明他」というのは、照明やテレビ、パソコンなどの機器のエネルギー消費をまとめたものです。エネルギー消費の割合は大きいですが、LED電球に変えるとか省エネ型の商品を選択することで“賃貸住宅であっても”節約の工夫はできます。
他方、「給湯」「冷房」「暖房」は、どうでしょうか?賃貸物件の場合、大多数の人は備え付けの給湯器やエアコンを使用すると思います。また、暖房のエネルギー効率に大きく影響を与える断熱性能も、家を決めた時点で決まります。「給湯」「冷房」「暖房」のエネルギー消費は家庭のエネルギー消費量の約半分を占めます。そのため、賃貸物件の場合、家を決めるということは、その後借り続けるであろう数年間のエネルギー消費量の半分の行く末を決めていると言っても過言ではないのです!!省エネ性能の高い機器を持つ家を借りることは、エネルギー消費量の削減を通じて、光熱費の節約につながります。加えて、エネルギー消費により発生する二酸化炭素の削減にもつながります。 ところで、給湯機器や空調機器の効率はどの程度変わっているのでしょうか?ガス給湯器であれば、従来型の効率が80%に対して、高効率型は95%を実現しています2)。これは、エネルギー消費量(=ガス代)を約2割減らせることを意味しています。電気式の給湯器はもっと顕著で、最新のヒートポンプ式給湯器は従来の電気温水器に比べて4倍の効率(=給湯の電気代が4分の1になる)を誇ります2)。また、近年のエアコンの効率は大幅に向上しており、約15年前の機器と比較して2倍(電気代が半分)になっています3)。加えて、複層ガラスをはじめとする断熱技術の普及も進んでいます。政府も平成28年から「賃貸住宅における省CO2促進モデル事業4)」を開始し、省エネ型の賃貸住宅の普及促進に力を入れ始めています。賃貸住宅のエネルギー性能が“熱い”時代がやってきています。
さて、ここでもう一度皆さんに質問です。みなさんは、賃貸住宅を選ぶ時に、何を基準にしていますか?さまざまな譲れない条件に加えて、エネルギー性能も気にしたいと思った人が一人でも増えていたら嬉しいです。
参考文献
1) エネルギー庁:エネルギー白書<http://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/>,2017-6-30
2) 資源エネルギー庁:省エネ型製品情報サイト
<http://seihinjyoho.go.jp/>,2017-6-30
3) ヒートポンプ・蓄熱センター:高効率化による省エネの進展<http://www.hptcj.or.jp/study/tabid/104/Default.aspx>,2017-6-30
4) 環境省:平成28年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(賃貸住宅における省CO2促進モデル事業)の公募について(お知らせ)<http://www.env.go.jp/press/102424.html>,2017-6-30