インドネシア・南スラウエシのお米作りと水管理【平山奈央子】
2015年12月01日(火) 12:52更新
インドネシアは日本と同じく「お米文化」の国で,日本人と同じように主食として「白米」を食べます.“ナシゴレン”というインドネシア料理を聞いた事はないでしょうか.“ナシ”は「米」,“ゴレン”は「炒める」という意味でチャーハンのような料理です.
それでは,日本とインドネシアのお米作りは何が違うでしょうか.
違うところはたくさんありますが,例えば,1年で作ることができる「回数」が違います.インドネシアの熱帯雨林気候で,一年を通して暖かく,雨季(10月~4月)と乾季(5月~9月)で雨量が違います.日本ではゴールデンウィーク頃に田植えをして,9月中旬くらいまでに収穫をする農家が多いです.一方で,私が調査しているインドネシア南スラウエシ州では,かつては雨季にしか作れませんでした。しかし,2000年に農地の上流にダムができ,水を溜め,水路に流す水量を人為的に調整できるようになったので,乾季も(多いところは2回)作付けができるようになりました.もちろん,未だに年に1度しか作れない地域や乾季はコメ以外の作物(豆類や野菜)を作ることもあります.しかし,多くの農作物を作ることができ,収入が増え,農民の暮らしはダム建設以前よりも豊かになりました.
ダムができたことによって農業に使える水量を人為的に調整できる,といっても「うまく」操作しなければ下流の田んぼまで水が行き渡りません.ダムからそれぞれの農地に水が届くまでに,長い水路と多くの水門があります.
私は,水門を操作する人たち同士がコミュニケーションを取ったり,自分の田んぼの上流や下流の田んぼにどれくらい水が入っているのかを共有することで,末端水路まで水を送ることができるのではないか,と考えています.そのため,水門操作をする人や農家組合長など水利関係者間のコミュニケーションの方法・頻度・内容を調査しています.その中で一番のキーマンは最末端の水路を管理するMandoro Jene(マンドロジェネ)という役割の人々と考えています.この役職はダムができる前からありました.彼らの普段の仕事は写真のようなスタイルで,毎日管理エリアを歩いて回り,水路のゴミを取ったり,水門を開けたり閉めたりしています.
この地域では,農業のための水はタダ(無料)です.また,マンドロジェネの仕事に対する対価は収穫された「お米」で支払われるところも日本の農業とは大きく違います。