ごみ処理施設の立地・建設(その1) 【金谷健】
2016年01月06日(水) 12:52更新
ごみ処理施設の立地・建設には、長い年月が必要となります。特に、立地場所の選定に、時間がかかります。残念ながら、ごみ処理施設は、「必要性は理解できるが、自分のところに立地されるのは反対」となりがちな、「迷惑施設」の一種だからです。
なお、ごみは毎日絶え間なく排出されるので、その処理を現在のごみ処理施設で実施しながら、それと並行して、次の新規施設の検討が必要となります。そのため、現在のごみ処理施設の稼働開始からある程度の年数が経過した時点で、次の新規の施設の立地・建設の検討が必要になります。
滋賀県立大学の所在地である滋賀県彦根市を含む、彦根愛知犬上地域(彦根市、愛荘町、豊郷町、甲良町、多賀町;湖東地域とも言います)でも、現在、新規ごみ処理施設建設候補地選定が進められています。
当該地域では、2001年に当時の1市7町で湖東地域一般廃棄物処理広域化事業促進協議会を発足し、広域化の検討を始めました。しかし、2008年に有力A地が地盤の問題により断念となり、2012年に有力B地が地元の反対により断念となりました。
こうした経緯と県内先進地事例調査を踏まえ、彦根愛知犬上広域行政組合では、2013年に、①公募方式採用、②地域振興策事前検討、③彦根愛知犬上地域ごみ処理施設建設候補地選定委員会の発足、という新方針を決定しました。
選定委員会は、学識経験者2名(大学教授)、専門委員3名(警察署交通課課長、弁護士、不動産鑑定士)、公募委員1名、環境衛生委員(構成1市4町からの推薦で各1名)で構成されています。当学科からは、金谷と平山先生が委員として選定委員会に参画しています。
選定委員会の役割は、募集要件の調査・検討、選定要件の調査・検討、候補地の評価・選定です。2017年3月までに、候補地の優先順位を、彦根愛知犬上広域行政組合の管理者に報告する予定です。組合管理者会は、その報告をもとに、候補地を決定します。
選定委員会は、2014年12月に第1回が開催され、現在(2016年1月)までに7回開催されています。なお下記サイトに、選定委員会の会議結果や開催案内が掲載されています。
彦根愛知犬上広域行政組合HP
公募期間は、2015年10月15日~2016年7月29日までの9ヶ月半で、現在、公募期間中です。応募には、土地所有者及び地元自治会の同意が必要です。
地域振興策(まちづくり事業プラン)は、地域活性化交付金が1億円、環境整備事業補助金が2億円で、候補地決定後2年以内に、地元自治会から提出いただく予定です。
どの程度の応募があるかは現時点では未知数です。ただ、第1回選定委員会では、中間処理施設等の建設用地について公募を行った12事例が紹介され、そのうち、選定中の2事例を除く10事例のうち7事例で応募がありましたので、応募がある可能性は低くはないと考えられます。また2015年11月に開催された「公募に係る全体説明会」には40名の参加があり、関心も高いようです。地域振興策という地元配慮が事前に提示されていることも、応募への誘因になるかと考えます。
なお応募があって、順調に2017年に候補地が決定しても、その後、基本計画の策定、地元説明会、環境アセス、都市計画決定、用地交渉、用地買収完了、基本設計、実施設計、造成・建設工事という段階が必要で、竣工(稼働開始)は、候補地決定の約10年後と見込まれています。それは、上記の促進協議会発足から約26年後であり、彦根市のごみ焼却をしている同市清掃センターの稼動開始(1977年)からは何と59年後になります(ただし改良工事をした2001年からですと26年後)。このように、ごみ処理施設の立地・建設には長い年月が必要です。