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マチュピチュで身極めてみた! 【近藤隆二郎】

2014年10月15日(水) 10:24更新

天空都市マチュピチュで調査する

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天空都市と呼ばれるマチュピチュは、一生に一度は行ってみたいとされる世界遺産ではないだろうか。インドにばかり通っていた私にマチュピチュ調査の話が舞い込んできたのは2000年のことであった。インドつながりで、1995年にインダス文明のモエンジョダロ遺跡の調査に参加し、四大文明を衛生工学的視点から研究するチームに巻き込まれ、そのリーダーであった楠田先生からのお誘いであった。南米に行ったことがなく、ペルーもマチュピチュも初めて。まあでも、行ってみたいと思い参加した。

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がしかし、なんと遠いのかと実感した旅程であった。まあ日本から行くと地球の反対側だからやむを得ないのだが。ダラス空港で乗り換えてさらに数時間でようやく首都リマに到着。そしてここから標高4000mの山岳都市クスコに飛ぶ。ここが大変である。いきなり富士山より高い都市に向かうため、高山病に注意しなければならない。同行の高齢の先生は心臓を悪くされた。コカ茶でひといきをつく。酸素が薄いため、ビールや酒もとんでもなく酔うので要注意であった。また、食事はポテトと肉ばかりでちょっと辛かった。なお、実はマチュピチュは標高3000m以下であって、クスコよりかなり下がるので、カラダ的にはかなり楽になるのである。

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さて、何をしにマチュピチュに行ったかというと、インカにおける水文化の解明に行ったのである。モエンジョダロの衛生施設について調査をしたので、その流れでインカではどうなのかということである。インカ文明では太陽信仰が有名だけれど、実はマチュピチュ遺跡にも水浴び場が20ヶ所弱もあるのだ。他のインカ遺跡にも水関連施設が数多くある。この驚愕の技術で石に彫り込んだ溝や流れの意味は何か?ということがテーマである。

遺跡に水を流して浴びてみる

ペルーの考古学の先生とインカ遺跡をどんどんと見ていった。うーん、なんでこんなに石に彫り込むのだろう。彫り込んだ溝のエッジなどを見て触っていくと、当時のインカ人たちの加工の姿や水の浴び方を想像できる。何より、時を超えて同じ場所で同じ水、同じしぶきを浴びることができるのだ。

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連れていってもらった遺跡で驚愕の事例だったのが「サイウィテの石」と呼ばれるものだ。クスコからジープで5時間ほどかかるところにあるので、ほとんど日本では知られていないだろう。初めて見たときは、まるでスターウォーズに出てくる宇宙船かと思った巨石である。半球上面にミニチュア化した世界が彫り込まれている。ここまで彫り込む意志とは何なのか。コスモロジー(宇宙観)を象徴しているのだが、どうやら水の流れを儀礼に使っていたらしい。そこで、許可を得て実際に石にのぼって水を流してみた。すると、棚田や水路、水施設らしきを彫り込んだところに水が流れていく。ああ、これがインカの世界観なのだ、そしてそこに流れる水なのか。

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こういう実体験を元に、インカを征服したスペイン文書や関連書籍、データなどから類推し、「垂直」という水の流れとの関係について考察した。アジアでは「陰-陽」という二項対立の文化があるが、このペルーアンデス地方では、「ハナン-フリン」という垂直のコスモロジーがあった。この垂直を生み出すための溝であり水であるのだ。。。

見極めるためには、身極めてみることから

なぜ現場調査が必要なのか、それはただ単にヒアリングをしたりするだけではない。データをとるだけでもない。インカやインダスでは既に住民は滅亡していて当然ながら聞くこともできない。そこからいかに推測するかだが、まずは、その場で自分のカラダで体感すること、その場にひたることはとても大事なことである。何度も現場に通えというのは、自らのカラダをその現場になじませることに他ならない。知識ばかりで問題は見えてくるわけではない。カラダをひたらせることから感覚として感じることも重要な方法である。
見極めるためには、身極めてみることからだ。