
大学の先生のお仕事 学会活動編 【吉川直樹】
2025年07月02日(水) 03:46更新
大学教員が普段何の仕事をしているか、一般にはあまり知られていないようです。講義をしていることは皆さんご存知だとしても、それ以外の仕事についての認知度は決して高くないように思います。
以前、本学科の平山先生が、大学教員のお仕事全般について、この教員コラムで書かれています。
大学の先生のお仕事【平山奈央子】 https://depp-usp.com/archives/5641
今回は大学教員のお仕事についての第2弾を(勝手に)書こうと思います。まずはAIに「大学教員の仕事」について聞いてみます。
Copilotの回答
「教育: 学生に講義を行い、専門知識を教えることが主な業務です。授業準備、教材作成、試験の作成・採点、学生の指導(ゼミ・研究指導など)も重要な役割になります。
研究: 学問分野における研究を行い、新しい知見を生み出します。論文の執筆、学会発表、研究費の獲得、共同研究の推進などが含まれます。
社会貢献: 地域社会や業界との連携、専門知識を活かした講演活動、メディアへの寄稿、行政との協力など、多様な形で社会と関わります。
また、大学の管理運営(委員会活動やカリキュラム作成など)にも関与することがあり、かなり幅広い業務を担っています。」
だいたい合っていますが、全てを表し切れていない、といったところでしょうか。今回は、AIの回答にあまり書かれていないことを取り上げることにして「学会活動編」をお届けしたいと思います。
とある学会でのポスター発表会場の設営の様子。 設置されたパネルに、発表者が作成したポスターを貼り付けて発表します。
学会、という言葉は聞いたことはあるかもしれませんが、どのようなことをしているか、イメージがつかない方も多いと思います。
学会は、ある分野の研究者の集まりです。その規模は学会によって様々で、会員数は少ないもので数十名程度から、大きいもので数万名に上ることもあります。人数の少ない組織は、研究会と呼ばれることもあります。
多くの学会が行っている活動は主に以下の通りです。
・学会誌の編集と発行
・「研究発表会」「大会」などとよばれる、研究発表のイベント開催。「学会発表」というときの「学会」は、このこと。
・会員や一般向けのセミナー、シンポジウム、研究会などの企画と運営
その他、学会によっては海外の学会の交流、学生向けイベント、書籍出版、専門分野に関する提言、(技術者など実務家が多い学会では)会員向け教育などの事業をしているところもあります。
大学院生になると、多くの学生が学会で発表することになります。ですので、学会を発表の場として認識している人も少なくないと思います。それはその通りなのですが、では学会を誰が運営しているかというと、ほかなならぬ研究者自身です。もちろん、大学教員も運営に携わっていることが多いです。
ある程度の規模の学会になると、学会の事務局が存在していて、職員さんが会員管理や会計などの事務を行ってくれますが、先に書いたような主な活動は専門性が必要ですので、基本的には研究者である会員が委員となって仕事をします。学会の会員は、主に研究者(大学教員や国公立研究機関・企業の研究員など)です。委員に選ばれた(頼まれた?)人は、基本的にボランティアでそれらの仕事をこなします。所属先にもよりますが、学会活動も研究の一環とみなされることが多いです。
学会誌の場合は、研究者や学生などが論文を投稿して、その論文は審査され、審査を通った論文が掲載されることが通常です。投稿するのは主に研究者ですが、審査(査読といいます)をするのも、それを編集するのも研究者です。
学会(大会)も、同じく、参加して発表するのも研究者が中心ですが、企画・運営するのもまた研究者なのです。学会(大会)の場合、色々な仕事があるので。通常は、実行委員会を組織して準備にあたります。発表申し込みを受け付けたり、発表のプログラムを作ったり、参加者からの問い合わせに答えたり、いくつかの発表から構成される「セッション」の座長(司会)を決めたり、などなどです。
多くの学会が年1回の開催です。中には毎年同じ会場で開催する学会もありますが、通常は毎年違う場所で開きます。ある程度の広さの会場が必要なので、大学で行われることも多いです。本学でも、時々、主に夏休みや冬休み期間に学会が開かれていることがあります。毎年違う場所で開催するのは、理由はいくつかあると思いますが、一番は「準備をする人が大変だから」でしょう。開催地で準備にあたる人(大学で開催の場合は、その大学の学会員の教員)は大変です。学会の規模はそれこそ千差万別ですが、100名くらいから多いと1万人以上の多くの人が参加します。会場を確保して設営したり、運営を手伝ってくれる学生アルバイトを募集したり、懇親会の料理や飲み物を手配したりなどなど、参加者を迎えるための仕事は多いです。これを、大学教員の通常の仕事に加えて行うことになるので、とても毎年同じ場所で開催するのは無理なわけです。負担も大きいですが、一方でやりがいもある仕事でもあります。
以上で私なりの「学会活動編」ですが、自身の経験に基づいて書いているので、書く人が変わればまた違った観点から書かれるかもしれません。
学生の中には、大学の先生は夏休み・冬休みは暇だと思っている人もいるようです。講義のない日にも色んな仕事をしているんだな、と分かってもらえれば嬉しいです。