クアラルンプールのツインタワー前の憩いの場【村上一真】

2018年12月25日(火) 10:40更新

前回のコラム(シンガポール:空港とカジノ http://depp-usp.com/archives/3485)で、「ベトナム(ハノイ、ホーチミン)、タイ、マレーシア、と南に下ってきた本コラムシリーズの最後はシンガポールです」と書き始め、そのときは、次回のコラムシリーズは国内各所をテーマにしようと考えていました。PC内にある写真を探して、それをもとに文章を書いていくのですが、国内の写真がない。。写真を撮る習慣はないものの(いまだにガラケーだし、SNSはやっていない(できないだけ?))、1枚も無いとまでは思いませんでした。ですので前言撤回で、今回はシンガポールから北にのぼって再度マレーシアです。

マレーシアの首都のクアラルンプールには、有名なツインタワーがあります。有料なので上まで行ったことはありません。研究者の悲しい性で、写真にも小さく写っている低層4階くらいにあるKinokuniya(紀伊国屋書店)で長く時間を過ごしました。

さらに低層、というよりもツインタワー1階前には大きな公園があり、池もあります。競馬場跡地を再開発したとのことです。地元の人、近くで働く人、観光客が池のまわりで夕涼みをしています。昼間が暑く、そのギャップのためか夕暮れ時はすごく快適です。緑も多く、風が気持ちよかった、かまでは覚えていませんが、高層ビルに囲まれた空間というギャップもあり、不思議な感覚でのんびりできました。

暗くなると噴水ショーが始まります。気づけば、まわりは観光客ばかりになっていました。派手な音と光は憩いの場のかたちを変え、地元の人を遠ざけます。個人的には、何もしないままのほうが、魅力的な空間だと感じました。ありきたりではない場所で、ありきたりなものを重ねると、ありきたりになります。ただ池と緑とビル群の明かりを眺めつづけられるだけで良い気がします。

観光立国というものを目指している日本でも、オーバーツーリズムや観光公害として、渋滞、混雑、ゴミや民泊に係る問題など、地元住民の日常生活に悪影響を及ぼす事例を聞くことが多くなりました。観光地は、世界遺産認定やインスタ映えなどにより、競争相手がどんどん増え、流行廃りが激しいものです。先進事例を真似しても差別化は図れません。無理に観光客数を維持・拡大させようとすると、弊害も大きくなる可能性があります。また、何もしなくても観光客が増えていく地域もあり、それに伴いマイナス面も顕在化していきます。そこでは不可逆性が生じ、元のかたちに戻すのが難しくなる場合もあります。変化のスピードが急であればあるほど、対応は追いつかなくなるものです。

経済成長に邁進して公害を発生させた日本の経験は、持続可能な発展(Sustainable Development)を目指すものとして、活かされるべきです。民泊やライドシェアなど、規制緩和の認可水準が厳しかったり、スピードが遅かったりは確かだと思いますし、海外からの観光客数目標を掲げるのは悪いわけではないですが、経済のち環境というかつての対処療法的な対策をなぞって、観光のち地域・環境ではなく、また一方で地域・環境のち観光として慎重になりすぎるのではなく、観光のスピード・規模にあわせた地域・環境の予防的だけれども発展的な対策が必要であり、そのための(単純な既得権益保護のためではない)資金投入が必要だと考えます。