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ごみ処理施設の立地・建設(その3)【金谷健】

2017年11月02日(木) 01:37更新

前回(2016年11月)の私のコラム
ごみ処理施設の立地・建設(その2)http://depp-usp.com/archives/2747
では、滋賀県立大学の所在地である滋賀県彦根市を含む、彦根愛知犬上地域(彦根市、愛荘町、豊郷町、甲良町、多賀町;湖東地域とも言います)での新規ごみ処理施設建設候補地選定について、2016年10月時点までの状況を紹介しました。公募の結果、彦根市内から3件、愛荘町内から2件、合計5件の応募があり、彦根愛知犬上地域ごみ処理施設建設候補地選定委員会(以下、委員会と略)の第10回委員会を9月23日に開催したところまで、の紹介です。

今回のコラムは、その続きです。

委員会は、第11回委員会を2016年11月14日に開催(応募地視察)、第12回・第13回委員会を11月28日午前・午後に開催(適性評価(二次審査)(各項目の重要度や項目間の相互関係等からの評価)の検討 、選定委員会報告書について)、第14回委員会を12月26日に開催(第 12・13 回選定委員会以降の情報について 、報告書(案)について)、第15回委員会を2017年2月13日に開催(報告書の決定)し、報告書を管理者(彦根愛知犬上広域行政組合の管理者;彦根市長)に渡して、委員会としての役割を終了しました。委員会としての主な結論は、

*5つの応募地の評価(100点満点の点数)は、応募地③が1位(73.38点)、応募地④が2位(71.21点)、応募地②が3位(70.15点)、応募地⑤が4位(69.07点)、応募地①が5位(68.31点)であったこと。
*いずれの応募地も70点前後の高得点であり、点差についても5点差以内と極めて小さいものであったこと。です。なお報告書(概要版)は、広域組合のHPの下記に公開されています。

https://www.genaiken-kouiki.jp/cmsfiles/contents/0000000/479/houkokusyo.pdf

その後、この選定委員会報告を受けて、管理者会議(彦根市長、愛荘町長、甲良町長、多賀町長、豊郷町長、彦根副市長で構成)が、計7回開催されました。
そして2017年6月30日に、管理者会議の結論として、選定委員会での評価が2位だった応募地④(愛荘町竹原区)が候補地として決定されました。この管理者会としての「建設候補地選定理由」は、広域組合のHPの下記に公開されています。

https://www.genaiken-kouiki.jp/cmsfiles/contents/0000000/479/senteiriyuu.pdf

まず、管理者会の協議経過について

*計 7 回にわたる会議の中で、様々な角度からの意見交換や活発な議論が行われたものの、優先順位や実現可能性の捉え方等による見解の相違などから、管理者(彦根市長)、副管理者(愛 荘町長、豊郷町長、甲良町長、多賀町長および彦根市副市長)の全員が賛成する候補地は見出すことができなかった。
*しかしながら、ごみ処理施設の建設は重要かつ喫緊の課題であることから、最終的には、苦渋の選択等、各自様々な思いはある中で、管理者会としての総意ではなく、管理者がその責任において、建設候補地を決定することで、一定の結論に至った。
とされています。

その上で、選定理由は、以下のようにされています。

*まず、優先順位 1 位である応募地③については、農業振興地域に指定されており、現状、耕作が行われている優良農地であることから、地元自治体の農業施策等との関連や、報告書受領 後に農業委員会から提出された要望等を考慮する必要があった。
さらに、過去に施設建設を断念した候補地に近く、当該候補地と同様に、軟弱地盤であること等を踏まえると、建設候補地として最も適しているとは言い難く、選定を避けるべきである と判断した。
*次に、優先順位 2 位である応募地④(愛荘町竹原区)については、管理者会議において賛否両論があったものの、建設候補地として選定できない決定的な要素は見出せなかった。特に、施設建設にかかるイニシャルコスト(施設建設費を除く用地取得費、道路整備費等の 周辺整備費)が、他の応募地と比較して、半額以下であることは高く評価できる事項である。また、選定委員会からの報告書の「各委員から出された意見概要」における「懸念事項」をあらためて検証したところ、いずれの懸念事項についても整理ができることからも、建設候補地としての適性を十分に備えていると言える。
*これらのことから、選定委員会の優先順位を最大限尊重した上で、当組合の管理者として総合的に判断した結果、応募地④(愛荘町竹原区)を建設候補地として決定した。

なお、上記の「優先順位や実現可能性の捉え方等による見解の相違などから、管理者(彦根市長)、副管理者(愛 荘町長、豊郷町長、甲良町長、多賀町長および彦根市副市長)の全員が賛成する候補地は見出すことができなかった。」という点の具体的内容は、ある彦根市議会議員が情報公開請求で入手した、管理者会議の議事録から明らかとなり、下記の新聞報道がなされています(2017年8月23日の滋賀彦根新聞;ネット公開は8月28日)。

http://shigahikone.blogspot.jp/2017/08/

また、彦根愛知犬上広域行政組合の議会は8月30日に、「新ごみ処理施設の設置位置を定め、または変更する場合は議会の議決が必要」という議員提出の条例案を可決しました(2017年8月31日の中日新聞、9月25日の京都新聞)。さらに彦根市議会は9月25日に、新ごみ処理施設について「慎重審議」の請願を採択しました(2017年9月26日の中日新聞)。
広域行政組合は10月27日に「第1回彦根愛知犬上地域新ごみ処理施設整備基本計画検討委員会」を開催し、「愛荘町竹原区」を建設候補地の前提とした検討や手続きを進めていますが、条例で「設置位置決定には議会議決が必要」とされたことを踏まえますと、議会判断を含め、今後の動向が注目されます。