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彦根の未来は? 【秋山道雄】

2015年03月16日(月) 04:20更新

 2月8日の日本経済新聞に、彦根城を扱った記事が2面にわたって掲載されている。日経新聞では、毎週日曜日に「美の美」というタイトルで美術を対象とした特集が組まれているが、今回は「国宝天守」というテーマで、天守が国宝に指定されている姫路城、松本城、犬山城とならんで彦根城も取りあげられたわけである。彦根城の破風(切妻屋根の端につけた山形の板)が、絶妙な組み合わせをもっており、これが天守の壮麗さを何倍にも高めていることがくわしく解説されている。その背景には、彦根城が築城された時期の政治情勢や施行者の意図が働いていたことも説明されていた。

 解説文のなかに、「現在、彦根城天守の最上階から四方を望むと、西に琵琶湖が広がり、北には竹生島も望める。名神高速道路が南から北へ延び、北陸自動車道と分岐する。北近江の地は古来、中山道と北陸道が交わり、京にも近く、水陸交通の要衝として戦略的価値は高かった。」という一文がある。彦根の位置を的確に表現したこの記事は全国に発信されているから、これを読んだ読者の頭には、彦根城の壮麗さとともにその立地上の特性も合わせて刻み込まれていることであろう。

 彦根市は、1999年に彦根市環境基本条例を制定した。この条例は、良好な環境の保全と創出を目的としているが、良好な環境の対象として、生活環境、自然環境とならんで歴史および文化環境をあげている。前2者はどこの環境基本条例でも対象となるが、歴史および文化環境を対象として取りあげている点が彦根の地域特性を反映したユニークな点であろう。彦根市ではこの条例にもとづいて環境基本計画を策定し、2001年度から10年かけてそれを実施し、2011年度からは2期目の計画期間に入っている。

 各地の自治体で環境基本計画が策定されており、すでに2期目に入っているところも少なくない。ただ、その達成効果をみると、思ったほど進んでいないというところもまま見受けられる。彦根市の場合は、どうであろうか。

 彦根市は、歴史および文化環境を環境基本条例の目的に取り込んできた経緯があるので、彦根城とその立地環境に関する情報が全国に向けて発信された今日、改めて環境基本計画の達成効果を点検し、それを改善する好機を迎えている。

彦根城(彦根観光協会HPより)

彦根城(彦根観光協会HPより)