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プトラジャヤと首都機能移転【村上一真】

2017年01月11日(水) 09:41更新

ベトナム(ハノイ、ホーチミン)、タイに続いて、今回は南に下ってマレーシア。行政首都のプトラジャヤについてです。首都は依然クアラルンプールですが、マハティール首相のもと、国の行政機関の大部分を移転させ、新たに作った都市です。いわゆる首都機能移転に拠る新都市です。ブラジルのブラジリアも同様に有名ですが(ブラジルは首都もリオデジャネイロからブラジリアへ移転)、何もないところにゼロから都市をつくる、しかも行政機関を中心につくると、本当に整然とした、逆に言うと面白みのない都市になります。居住者も行政機関に勤める人が大半のため、平日昼間に歩いている人はほとんどおらず(暑い!、というのもありますが)、不思議な空間です。

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ただ、マレー半島は地震が少ないからか、建築物そのものはユニークな形をしていたり、デザインが凝っていたりと、興味深いものが多いです。シンガポールにあるマリーナベイサンズ(屋上プールが3棟をつなげている建物)からも分かると思います。シンガポールやマレーシアは耐震性などの制約が小さいため、建築家にとっては天国のような地域である、という話も聞いたことがあります。

日本は地震をはじめとして自然災害が多い国であり、首都直下型地震や南海トラフ地震は、高い確率で30年以内に発生すると予想されています。日本での首都機能移転の話は、ずっと前から議論されては消えての繰り返しです。ようやく文化庁の京都への全面移転が決まりましたが、他の多くの自治体からの移転要望はかなっていません。かなえられたとしても、省庁や研究機関の機能の一部移転(予定)にとどまっています。一方、企業は東日本大震災や熊本地震を経て、レジリエンス、デュアルなどの掛け声のもと、サプライチェーンだけでなく、本社機能の分散化などの各種対応を進めています。

ブラジリアやプトラジャヤの首都機能移転には、それぞれの背景・目的がありますが、自然災害へのリスク・マネージメントは、緊急度・重要性としては相当高い目的だと思います。また、東京一極集中や過疎化への対応として地方の活性化も叫ばれている中、ヒトを動かす政策として、首都機能移転は積極的に進めることが必要です。第二首都や副首都などの名称は、映画やアニメの世界だけで使われるものではないでしょう。