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イングランドの緑なす湿地へ1【上河原献二】

2016年10月12日(水) 01:53更新

 私たちはこの9月、イングランドを訪ねてきました。
 何をしに? 琵琶湖周辺で問題になっている侵略的な外来植物オオバナミズキンバイの対策の調査に行ったのです。オオバナミズキンバイは今や西ヨーロッパの各地に拡がって問題を起こしています。その中でイングランドは、オオバナミズキンバイの侵入に対して早い段階から対応して、かなりの成果を挙げています。

イングランドのオオバナミズキンバイ 撮影地:Breamore Marsh

イングランドのオオバナミズキンバイ 撮影地:Breamore Marsh

 イングランドでは、オオバナミズキンバイを根絶またはほぼ根絶した現地二カ所、そして生物学的防除方法の研究を行っている研究所(「国際農業・生物科学センター」(CABI))とイギリス政府で外来種対策を担当している「外来種事務局」(NNSS)を訪問しました。滋賀県立大学大学院環境科学研究科環境動態専攻修士課程でオオバナミズキンバイの生態について研究している稗田真也さんにも同行してもらいました。今回は、その調査旅行のうち、二つの現場を紹介します。

 第一は、ロンドン・ウェットランド・センターです。ロンドンの郊外の大きな湿地公園となっていて、食堂・売店付きのビジター・センター、遊歩道、観察小屋がよく整備されています。実はそこはもともと水道公社の浄水場があったところなのです。ロンドン市街の拡大に伴って宅地開発されようとしていたところを、自然保護活動家が湿地公園として保全することを提案して、1995年から整備が始まったそうです。今見ることができる湿地の姿はイギリスにおける自然再生事業の成果なのです。その管理は、「野鳥・湿地トラスト」(WWT)という民間団体に任されています。その職員であるブロックさんに私たちはお話をお伺いしました。
 ロンドン・ウェットランド・センターの一角において、1998年にイギリスで初めてオオバナミズキンバイが発見されました。25平方メートルほどに群落が大きくなったところで、手作業で除去を試みたもののうまくいかなかったそうです。そこで、除草剤を活用する、ただし、水域の生態系に影響を与えないように、噴霧によらず、対象の植物に直接塗ることにしたそうです。それを二年間行い2010年に根絶と確認したそうです。

ロンドン・ウェットランド・センターのビジター・センター

ロンドン・ウェットランド・センターのビジター・センター

保全を提唱した自然保護活動家スコット卿の銅像

保全を提唱した自然保護活動家スコット卿の銅像

観察小屋からの湿地の景観

観察小屋からの湿地の景観

撮影:上河原献二

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『イングランドの緑なす湿地へ2』