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川を活かしたまちづくり ~長浜市・米川での取り組み~【平岡俊一】

2022年07月28日(木) 10:56更新

本学環境科学部の必修科目「環境フィールドワークⅡ」は、主に学部2回生の学生が複数のクラスに分かれ、約半年の間、各地でフィールドワークを行うという講義です。私が担当教員の一人として参加(私を含めて3名の教員で担当)しているクラスは「長浜市中心市街地における都市河川を活かしたまちづくり~米川での調査・実践~」というタイトルで、滋賀県北部・長浜市の中心市街地を流れる「米川」とその周辺地域をフィールドに調査活動を行っています。今回は、この長浜・米川で展開されているまちづくり活動ならびに講義での取り組みについて紹介させていただきます。

長浜のまちなかを流れる米川

長浜市中心部は、北国街道や黒壁をはじめとする歴史的資源を活用した観光・市街地活性化事業が長年活発に展開されてきたまちとして知られています。「米川」は、そこを流れる全長約2.5㎞の小さな川です。現在も澄んだ水が流れ、夏にはコアユが群れて泳ぐ姿が見られるほか、川沿いには石垣やカワドを備えた民家などが続き、落ち着いたまち並みの形成に重要な役割を果たしています。高度成長期前までは、水運や洗い場、子どもの遊び場など、地域の生活・経済活動の中で多様な利活用がなされてきましたが、都市の近代化が進むとともに、徐々にそうした関わりは減り、住民にとって川の存在は縁遠いものになってしまいました。

しかし、近年、再び米川や周辺の景観などの価値を認識し、保全・活用を進めていこうという動きが地元の住民の間から出てくるようになり、2020年からは「長浜地区地域づくり連合会」や「長浜まちづくり株式会社」などをはじめとする複数のまちづくり団体が参加・連携する形で「米川・かわまちづくり事業」が展開されるようになりました。具体的な取り組みとして、現在、川の清掃活動、川歩きイベント、子ども等を対象にした川をフィールドにした遊び体験、生き物学習、灯篭流し、川とまちづくりをテーマにしたワークショップなどが実施されています。
米川・かわまちづくり事業の特徴は、その名称からも分かる通り、川の環境の保全だけではなく、その利活用を通じてまちの活性化も進めていくことを見据えているところです。長浜の中心部は、これまでの観光・市街地活性化によって訪れる人が増え、まちのにぎわいを取り戻しましたが、まちづくり関係者の間では、訪れている人の多くは観光客で、地元・近隣の住民が来訪・滞在する場になかなかなっていない、という課題が認識されるようになっています。かわまちづくり事業では、米川や周辺のまちの魅力を多くの人が認識するようになるのに加えて、川の周辺を地元住民が集まり、楽しめる場にしていくこと、などを目指した取り組みが進められています。米川を活用して、まちなかに地元の人たちにとっても過ごして楽しい空間をつくっていこうという考えは、まちづくりの課題解決の糸口のひとつになる可能性もある、とても興味深いものと考えられます。

調査の一環として実施した川歩き

まちづくり団体関係者に対するインタビュー調査

冒頭で紹介した環境フィールドワークⅡでは、2020年に長浜・米川をフィールドにした講義を開始し、現在3年目に入っています(ただし、1年目は新型コロナの影響で完全オンライン形式だったため、現地では一度も講義を行えませんでした)。かわまちづくり事業の展開に学生の立場から貢献することを目的に、定期的に長浜を訪れ(2022年度は計7回を予定)、調査や活動実践等を行っています。

具体的には、米川と周辺の地域社会との関わりの歴史、現状・課題などを明らかにすることを目的に、地元住民を対象にしたインタビュー、米川やその周辺地域の魅力を探るための探索などの調査を行い、その調査結果のとりまとめと今後のかわまちづくり事業に対する提言を作成した上で、地元関係者に対して報告・意見交換を行う、といった取り組みを実施しています。さらに、半年間の講義の締めくくりとして、8月初旬に同事業の一環として開催される「米川まつり」内で実施するイベントを企画し、実際の運営を地域の方々の協力を得ながら実施することを予定しています。昨年までは残念ながら2年連続で新型コロナの影響で中止となってしまう状況が続いており、今年度こそは無事に開催されることを祈りつつ、受講している学生たちは準備作業を進めているところです。

調査報告・意見交換会