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岐路に立つ日本の湿地 水陸両生の侵略的外来生物の管理に関するワークショップ【上河原献二】

2019年10月01日(火) 10:52更新

私たちは、琵琶湖博物館のご協力を得て、8月26日「水陸両生の侵略的外来植物の管理に関するワークショップ」を同博物館にて開催しました。その目的は、水陸両生の侵略的外来植物の管理に関する対策と研究を行っている国・自治体・大学等の関係者を集め、情報交換を行うとともに、ネットワークを形成することです。2017年度から3回目の開催となりました。今年は、私も含めて9本の講演を、国・自治体の行政担当者、大学・博物館の研究者の方々にしていただきました。琵琶湖に大規模に定着して問題となっているオオバナミズキンバイが議論の中心です。ちなみに2016年にアメリカ連邦政府研究機関の研究者たちが発表した論文では、オオバナミズキンバイはその近縁種とともに「世界で最も攻撃的な水生の侵略的植物の一つ」とされています(Grewell et al. 2016)。

今年のワークショップで特に注目されたのは、オオバナミズキンバイの分布域の拡大です。その侵入は全国的な段階に入りつつあるようです。大阪府下では、琵琶湖下流にあたる淀川で、2017年度に最初に確認されて以降、淀川のワンドなどに分布範囲が拡大しています(国土交通省近畿地方整備局淀川河川事務所日下河川環境課長)。また淀川以外でも大阪府下では、2014年に大和川で、2016年には高槻市内で、更に2017年以降には岸和田市・堺市内のため池や東大阪市等を流れる恩智川などで定着が確認されています(大阪市立自然史博物館横川学芸員・長谷川学芸員・高槻市立自然博物館高田主任学芸員)。特に、恩智川における群落は大規模なものです(写真1)。また、今回のワークショップで取り上げることはできませんでしたが、京都市内でも琵琶湖疎水の蹴上のインクライン船着き場や鴨川でもオオバナミズキンバイは定着しています(写真2)。千葉県内でも、2015年に印旛沼で、2017年には手賀沼でオオバナミズキンバイが確認されました。印旛沼ではごく初期段階での駆除に成功していますが、手賀沼における定着は大規模です(千葉県立中央博物館林紀男環境教育研究科長)。手賀沼における群落はおそらく現在日本最大と思われます(写真3)。

写真1 大阪府恩智川治水緑地付近 (2019 年8月7日)上河原撮影

写真2 京都市内鴨川四条大橋下流付近 (2019 年9月17 日)上河原撮影

写真3 千葉県手賀沼 (2019 年7月8日)上河原撮影

そのようなオオバナミズキンバイの分布域の拡大に関連して、不気味なことが分かってきました。本学部環境生態学科野間准教授のグループの研究により、琵琶湖畔の水鳥の糞の中から多数のオオバナミズキンバイの種子が見つかったのです。そのことは水鳥による種子の長距離散布の可能性を示唆しています(滋賀県立大学環境科学部野間准教授)。

他方で、琵琶湖では、滋賀県自然環境保全課を中心とする琵琶湖外来水生植物対策協議会の活動によって、オオバナミズキンバイやナガエツルノゲイトウの大規模な群落は見られなくなりましたが、これから駆除の難しい場所や巡回監視による残存個体の駆除の継続が課題となっています(滋賀県自然環境保全課中井主幹)。また琵琶湖北部では、環境省による直轄の除去事業も行われています(環境省近畿地方環境事務所野生生物課戸田課長補佐)。

駆除の難しい場所への対応に関連して除草剤を使用した場合の環境水中での残留と消失の評価についての研究(滋賀県立大学環境科学部須戸教授)、オオバナミズキンバイのメタン発酵処理についての研究(滋賀県立大学環境科学部伴教授・畑講師)、先進事例であるイングランドにおける法制度についての研究(上河原)も行われています。

日本は、イギリスのようにオオバナミズキンバイの侵入をうまく抑えることができるのでしょうか、それともフランス本土のようにほとんどの地域にオオバナミズキンバイの分布が拡大していくことになるのでしょうか。私たちは今その岐路に立っています。

(参考文献)

Grewell et al. 2016, Establishing Research and Management Priorities for Invasive Water Primroses (Ludwigia spp.), US Army Corps of Engineers.