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【書籍出版】環境政策の効果と環境配慮行動の分析:地域の自然環境の保全と創出の行動経済学【村上一真】

2021年01月12日(火) 09:49更新

村上一真准教授の書籍「環境政策の効果と環境配慮行動の分析:地域の自然環境の保全と創出の行動経済学」が日本評論社より刊行されました。本書刊行において、研究協力者として相沢さん,今田さん,梶原さん,高橋さん,高谷さん,正木さん,松井さん,松田さん,宮澤さん,矢野さん,横山さん,本書執筆協力者として小田垣さん,牧野さんらの学生(卒業生含む)にも関わってもらいました。
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8458.html (日本評論社の書籍紹介ページ)

まえがき
我々の日々の判断や意思決定は,多分に他者の意見や行動の影響を受けている。影響の受けやすさに個人差はあり,また影響を受けていることに気づかない場合も多い。これを主体性がない,自律的でないと責めても仕方がない。我々には特定情報の処理に係る動機づけ,時間,能力などに限界がある。認知的負荷の抑制やリスク回避のため,本能的に他者を意識・参照することは,生身の人間の判断や意思決定のスタイルといえる。
行動経済学は,人間を限定合理性に基づいた判断や意思決定を行う主体とみなす。本書は地域の自然環境の保全と創出の行動経済学として,他者に見えやすい2つの環境配慮行動(自然再生事業に伴う環境保全活動,家屋外での緑のカーテンの実施)と,これに係る環境政策(早崎内湖自然再生事業,緑のカーテンの普及施策)を対象に,他者を意識・参照する度合いも考慮した環境配慮行動の意思決定プロセス,環境政策の効果発現メカニズムを明らかにする。ランダム化比較試験(randomized controlled trial;RCT)の手法を用いた実験的研究や,構造方程式モデリング(structural equation model;SEM)を用いた因果メカニズムの解明を通じて,実行性・実効性の高い環境配慮行動の促進政策の提示を目指した。近年注目を集めるナッジ(nudge)やブースト(boost),EBPM(evidence-based policy making;証拠に基づく政策立案)においても,人々の限定合理性に基づくヒューリスティックな判断も考慮にいれた,意思決定プロセスや政策効果の発現メカニズムの分析がまず求められる。
新型コロナウイルス感染症は人々の生活様式を変え,その一部はある程度定着していくものと想定される。在宅時間の増加は家庭の電力消費量を増やす。他者とのコミュニケーションもデジタルによる割合が高まる。ただ近所の散歩や探索,自転車,家庭菜園やガーデニング,キャンプなどの流行もみられる。今後も引き続き,身近な自然環境との関わりの選好が持続する可能性がある。地域の自然資源の利用や保全,癒しや節電につながる緑のカーテン育成の促進政策の提示は,生物多様性保全や地球温暖化対策としてだけではなく,時流に沿ったものにもなると考える。