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公共関与の産業廃棄物最終処分場建設について思うこと【金谷健】

2020年11月16日(月) 10:46更新

廃棄物は一般廃棄物と産業廃棄物とに区分され、一般廃棄物は行政(市町村)に処理責任がありますが、産業廃棄物は行政には処理責任はありません。産業廃棄物は排出事業者に処理責任があり、排出事業者が自分で処理するか、処理業者に処理を委託します。しかし、産業廃棄物の処理施設、特に産業廃棄物最終処分場の建設には反対が多く、民間事業者が建設するにはかなりの困難が伴う場合が少なくありません。そこで、行政(都道府県等)が産業廃棄物最終処分場を建設・運営する事例があり、これを、公共関与の産業廃棄物最終処分場と呼んでいます。2018年4月時点で、公共関与の産業廃棄物最終処分場は全国に67か所あります(環境省:産業廃棄物行政組織等調査報告書、2020年3月)。

www.env.go.jp/press/mat02/113963.pdf

滋賀県の「クリーンセンター滋賀」も公共関与の産業廃棄物最終処分場の一例であり、公益財団法人滋賀県環境事業公社(滋賀県知事が理事長)が設置・運営しています。
http://www.shiga-kj.com/clean/index.html

この「クリーンセンター滋賀」について、今年(2020年)1月27日の京都新聞に、「県支援100億円の産廃処分場、運営終了へ 財政負担重く、後継施設の整備断念 滋賀」という見出しで、滋賀県は、「県が関与した管理型最終処分場の新たな整備は行わない」との結論に至ったことが報道されました。

https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/140781

滋賀県HPで確認したところ、今年1月20日付で滋賀県琵琶湖環境部循環社会推進課からの「滋賀県における産業廃棄物最終処分の方向性」という文書が公表されていました。

https://www.pref.shiga.lg.jp/ippan/kankyoshizen/haikibutsu/309458.html

上記文書によると、「県の公共関与による管理型最終処分場の新たな整備は行わないこととする。」とした理由として、以下のことが挙げられています。

①平成 30 年度に実施した産業廃棄物最終処分方向性検討事業の結果から、下記の理由により県の公共関与による管理型最終処分場の整備には課題等が多く、実現性が低いと判断されること。
ア 排出量の動向や不適正処理の減少、リサイクルの進展等により、従来公共関与が必要とされてきた事情が変化してきていること。
イ 産業廃棄物の排出量および最終処分量は、今後、微減で推移する見込みであり、近隣府県の民間事業者や大阪湾フェニックスで管理型最終処分場の拡張計画があることから、埋立量および採算性の確保が困難となることが予想されること。
ウ 整備費用等について県の負担金額が大きいこと。
エ 土地の面積、形状、法的条件、周辺住民や地元自治体の同意を含め、候補地の選定・確保が困難であること。
オ 関西では、公共関与による管理型最終処分場として大阪湾フェニックスが運営されていること。

② 関係者との意見交換を実施したが、下記のとおりと考えられるところであり、①の課題等を考慮すると、県の公共関与による管理型最終処分場を整備しないことがやむを得ないと思料されること。
ア 企業誘致や企業活動等のために県内に最終処分場を求める意見や民間での設置が困難と考えられる等の理由により行政の対応を求める意見はあったが、必ずしも公共関与が必要であるとの意見ではないため、民間による様々な対応も考えられること。
イ 公共関与による処分場にこだわる意見は特に見られなかったところであり、産業廃棄物の処理は本来排出者責任であることから、法に基づき事業者の指導等を行うとともに、まずは民間主導による整備も含め様々な取組を支援する方向性も必要と考えられること。
ウ 「廃プラスチックの問題(海外でのプラスチックごみの受入規制による国内での滞留)を懸念する意見については、廃プラスチックは最終処分による対応ではなく、極力リサイクルによる減量化等を促進していく方向性が望ましいこと。

なお上記文書によると、しかし、現在の「クリーンセンター滋賀」は、埋立期間は15年(2008年~2023年)ですが、建設に16年もの年月がかかっています(=地元への処分場構想の説明・協力依頼から、開業まで)。そのため、埋立期間終了まで3年しかない2020年時点での「結論」としては、「県の公共関与による管理型最終処分場の新たな整備は行わない」という以外にはなかったのではと推察します。そのため、上記①での「課題等が多く、実現性が低い」や、②の「整備しないことがやむを得ない」という記述は、ゼロベースでの検討の結果というよりは、「次期処分場を県としては整備しない」という前提があって、それに基づいて記述されたものと、個人的には解釈しています。
また上記文書によると、「県内由来廃棄物の最終処分量の内、クリーンセンター滋賀に搬入される割合は5割程度である(H28 4.0万t / 9.0万t = 44%)」とのことです。このクリーンセンター滋賀に搬入分の年間4万トンの最終処分量が、県外でスムーズに長期的に処分できるのか、個人的には少し懸念しています。

なお他の都道府県の状況ですが、茨城県は今年(2020年)5月26日に、「県では、現処分場「エコフロンティアかさま」の後継施設となる,新たな公共関与の産業廃棄物最終処分場の整備候補地を決定いたしました」とのことです。
https://www.pref.ibaraki.jp/seikatsukankyo/haitai/kikaku/kikaku/sinnsanngyouhaikibutsu.html

また、岩手県も次期処分場の建設をしており、建設地の立地する八幡平市HPには、2019年10月25日更新で、「公共関与による最終処分場は、県内で発生した産業廃棄物の適正処理の推進、県内の産業振興の支援、災害廃棄物等、市町村では処理が困難な廃棄物の最後の受け皿として、なくてはならない施設です。
岩手県では、平成7年に公共関与型産業廃棄物処理施設「いわてクリーンセンター」を奥州市江刺に整備し、産業廃棄物の適正処理を推進してきました。
いわてクリーンセンターの最終処分場では、東日本大震災津波で発生した産業廃棄物の受入れなどにより、埋立終了時期が震災前の予定よりも早い、平成33年頃になる見込みとなりました。
こうした背景のもと、いわてクリーンセンターの後継となる産業廃棄物管理型最終処分場を、当市平舘地区に整備するものです。」と記載されています。次期処分場の供用開始(開業)は、平成35年度(2023年度)の予定とのことです。

https://www.city.hachimantai.lg.jp/soshiki/shiminka/1778.html

このように、公共関与の産業廃棄物最終処分場建設への対応は、県によって違いがあります。この違いが何によるのか、この違いがどんな影響を及ぼすのか、などについての検討が、今後必要と考えます。