カナダ・エドモントンで見た石油文明の光と影【高橋卓也】
2015年07月02日(木) 09:06更新
カナダ・アルバータ州エドモントンでの国際コモンズ学会に参加しました。コモンズというのは自然資源を地域住民が管理する仕組みのことです。
学会が企画した1日フィールドトリップでは、エドモントン近くの炭化水素(石油・天然ガス)加工施設の団地(約5万8千ha/琵琶湖の面積は約6万7千ha)の見学に参加しました。オイルサンド(タールサンドともいう。粘度の高い油を含む砂。)産地のフォートマクマレーから約500kmの道のりをパイプラインで運んできた重質油等を加工する施設が立ち並んでいます。ここからカナダ東部、カナダ西部のブリティッシュコロンビア州、南のアメリカにパイプラインや鉄道貨車を使って、加工したガス・製品を何千キロメートルのかなたへと送り出します。
実は、北米では、オイルサンドやシェールガスといった非在来型の化石資源の生産の拡大が激しい議論の的となっています。これら非在来型の化石資源は、蒸気による含有成分の抽出、地底岩盤破砕+薬液注入などの新技術によって、これまで採掘不可能だった炭化水素を地中から取り出したものです。こうした非在来型化石燃料の生産は、気候変動問題を悪化させるのではないか、漏出などの環境問題につながるのではないか、という懸念があるのです。一方で、アルバータ州では、化石燃料の生産によって、長年、経済的な好調が続いてきたのも事実です。
今回のフィールドトリップでは、原住民、加工団地を運営する団体、地元農家からのお話をうかがうことができました。資源開発に対する、それぞれの立場からの複雑な思いを聞き、私たちの生活の基盤となっている石油文明の力強さとその代償を垣間見ることができたように思います。