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害獣駆除問題から考える自然との付き合い方2 【林 宰司】

2016年10月20日(木) 04:50更新

 話は変わるが,2014年2月にドキュメンタリー映画「よみがえりのレシピ」を見る機会を得た。山形県鶴岡市のイタリアンレストランのシェフが,需要がなくなり絶滅しそうであった地域の伝統野菜を新たなイタリアンのメニューとして提供し,よみがえらせたという話である。(現在,そのシェフはローマ法王やダライ・ラマ14世にも高い評価を受け,世界的に有名なシェフとなっているので,ご存知の方も多いかもしれない。)近代的な生産方法で生産されたその他の食材が安く大量に出回り,食文化も変わった現在の世の中では,そうした伝統的な食材が再評価されるためには,映画「よみがえりのレシピ」に見るような新たな利用形態が必要であろう。それは害獣扱いを受けているシカやイノシシについても同様であるが,どの程度の経済的価値の大きさに評価するかはわれわれ次第である。先の害獣駆除活動の価格弾力性が高いということは,「害獣駆除」という用途と代替する食料や皮革としてなどその他の利用形態の経済的価値が低いことを意味する。

 再び話が変わって恐縮であるが,長野県の諏訪大社に行くと「鹿食免(かじきめん)」という免罪符と共に「鹿食箸(かじきばし)」を頂くことができる。殺生が忌み嫌われた時代にも,この鹿食免を授かった者は,自然からの恵みを授かり,鹿肉を食べることが許されたということだ。そこから見て取れることは自然に畏敬の念を抱きつつ,自然とうまく付き合いながら生きて来た人間の姿である。

諏訪大社の鹿食免と鹿食箸

諏訪大社の鹿食免と鹿食箸

 さて,現代の私たちの自然との付き合い方はどうであろうか。仏教の観点から見ると,食肉の利用のためには家畜を殺し,害獣は無駄に殺して殺生を犯していることになる。シカやイノシシを駆除する対象としてのみとらえるならば,自然は害悪をもたらす厄介なもの,経済学的に言うとコストを伴うものでしかない。シカやイノシシは害獣として駆除される一方で,少量ではあるが高価なジビエ料理としても提供されている。もちろん害獣被害に悩む自治体の多くでジビエとしての活用は検討されてはいるが,果たして私たちは,害獣処分専用の処理場や駆除に対する補助金に拠出される費用と,食用に適した狩猟や解体技術が失われる損失とではどちらが大きいと評価するのだろうか。

※本記事は,「近江地域学会」メールマガジンVol. 29(2016年10月号)に掲載されたものを転載しています。

『害獣駆除問題から考える自然との付き合い方1』

リンク
滋賀県立大学COC事業「びわ湖ナレッジ・コモンズ―地と知の共育・共創自立圏の形成(文部科学省の平成25年度「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」採択プロジェクト)
http://coc-biwako.net/

近江地域学会 http://coc-biwako.net/chiikigakkai.html