第9期卒業生 谷口 浩
1.はじめに
私は現在機械メーカーの品質・環境マネジメントの部門で、
国内外の環境関連の法規制対応や品質・環境監査、環境活動の企画などに携わっています。
企業の環境活動に携わる立場から環境社会計画専攻を振り返り、
当専攻の有用性と今後の課題について述べたいと思います。
2.当専攻の有用性
2-1.専門知識
まず当専攻の有用性として環境関連の各分野の第一人者である教員から
早い段階で幅広く専門知識を学べる点があげられます。
会社では環境汚染対策だけでなく、製品の環境対応や環境教育、CSR(企業の社会的責任)といった
幅広い分野を扱いますので、専門知識は入社後からすぐに役に立ちました(特に廃棄物・化学物質管理など)。
また知識だけでなく、社内で環境対策を展開する際にはその内容を調べ、
対応を自分で組み立て、関係者に発表していくプロセス面でも役に立っています。
2-2.現場主義
次にフィールドワークを主体とした現場主義の徹底です。
どんな現場があるかを知るだけにとどまらず、問題解決とその面白さを体感出来るのは当専攻の強みです。
また現場で事を進める際には、合意形成技法などの問題解決のプロセスが役に立ちました。
会社組織でも何かを始める時には無理という言葉が聞かれることがありますが、
そうした場面で「本当に前に進めないのか?」をじっくり検証ながら少しずつ実現に近づける。
こうしたプロセスの考え方がいまでも教訓になっています。
「仕組みで自動化」などというと格好が良いのですがあまり上手くいかず、
泥臭く現場に通って初めてさまざまな情報や交流を通じてようやく形になる。そんな場面ばかりです。
「キャンパスは琵琶湖」という大学の理念の通り、地域の現場でやってきたことが力になっています。
2-3.ビジョンと多様性
あとひとつ強調したいのがビジョンと多様性を大事にしたカリキュラムです。
当専攻の環境というテーマは他学部以上に、世の中がどうあるべきかを考える必要があります。
企業の環境活動でも内容や進め方、組織の各階層の思いは多様で、
何を目指すのか、またその意義を明確に示すことは最も重要になっています。
「なぜそうするのか?」という問いに答えるビジョンがなければ人も組織も動きません。
またその過程には多様性を受け入れる幅広い視野・考え方が求められます。
答えのない政策の講義や演習、卒業論文を考えるときに、
どうあるべきかという視座を養う機会がありましたし、
他学部を含む多様性のあるカリキュラムが視野を広げてくれました。
当専攻が表立ってPRする内容そのものになったかもしれませんが、
裏を返せば意図することが社会の現場でも通用することの証だと思っています。
3.当専攻に期待すること
次に当専攻の課題と期待について述べたいと思います。
3-1.卒業論文までのステップの再編
つらかった卒業論文と言えば、卒業生の大半は共感されると思いますが、
3回の前半まではとは打って変わっていきなり卒業論文で高いレベルを要求されるため、
助走環境に対してハードルがやや高いように感じています。
そうした意味で3回生時に担当教官の専門・現場の範囲で論文を作成し進め方を体験するなど、
要求するレベルを前もって体感するステップが必要だと感じます。
論文作成のレールを一度走ることで、本番の卒論にスムーズに取りかかれるものと思われます。
3-2.科学技術的なアプローチの強化
もう一点は科学技術的なアプローチの強化です。
文理総合という形を取られていますが、学年が上がるにつれ、文系的な要素が強くなり、
技術者の輩出が割合少ないのではないかと思っています。
開学10年を境に技術系の教員の退官などが相次ぎました。
これは非常に残念なことで、環境ビジネスの展開にしても社内の環境経営の推進にしても、
技術的な知識・技能なしには前に進みづらい状況になっています。
そこで同学の工学部や地域の関連団体との連携充実といった方向も含めて、
政策実現のツールとしての科学技術的アプローチの充実を期待します。
3-3.活躍のフィールドの発見・支援
最後に学生が早くから自分の現場を見つけられるような施策を期待します。
現場を回ったり、各分野の第一人者の体験を聞く政策形成・施設演習がありますが、
その一端を感じるレベルにとどまっていると感じます。
そこで学生が一定期間現場の問題解決を進めるような活動の場を提供し、
学生が当事者・主役になり、知識・経験・意欲を活かすことが出来れば、
能力開発だけでなく進路選択に寄与するものと思われます。
4.おわりに
「ここで変われないやつは、いつまでも変わらない」、「学ぶことは変わること」
最も印象に残っている先生の言葉です。
当専攻では変わる仲間も、変わる自分も楽しめる場所ですし、
環境への奔流が強くなればなるほど、当専攻の意義は今後より一層広がると思われます。